本プロジェクトは、世界最高性能次世代質量分析(MS)システムを産学官連携で開発し、がん・アルツハイマー病(AD)等の革新的診断手法に繋げる事を目指しています。
平成25年度より、サブテーマ2,3がサブテーマ1に統合されました事に伴い、話題 ルーレットは以下の通りにまとめられます。
(サブテーマ1)次世代質量分析システムの開発
前処理では、抗体Fab部とビーズ間をPEGで繋げた新規抗体ビーズ法を用い、長寿医療話題 ルーレットセンターとの共同で 血中からのAD関連物質をAD患者・健常者検体を用いて定量したところ、ADの早期診断を可能にする新規バイオマーカー候補を発見しました。
イオン化では、血液や尿検体を用い、がんやアルツハイマー病に関連するタンパク質やペプチドを高感度に分析できる事を確認しました。また、前年度までに開発した糖タンパク質構造解析技術を臨床検体に適用し、疾病診断の可能性を検証しました。さらに、(市販医薬品の数10%が標的としている)膜タンパク質5種類に対し独自開発マトリックスを適用し、特に膜貫通(疎水性)部分を初めて検出できるなど、創薬への貢献が期待できる結果を得ました。
ハードウェアでは、次世代質量分析装置に対し、イオン光学系透過率の向上と測定回路のS/N比向上を行ったことにより、約7倍の性能向上、LC-Offline-MALDI SpotterではLCの分離条件及びSpotting条件を最適化する等の改良を行ったことにより、100倍の感度向上を達成しました。
ソフトウェアでは、実検体(例:前立腺がん尿試料)を用い、開発したソフトの評価を行った結果、一部ではあるが 既存ソフトよりも解析・同定能力の向上を示す結果を幾つも得ることができました。また、構成の再構築やマニュアル類の整備を行い、既公開ソフトを含め 継続的利用可能な最終版ソフトを一般公開し、学会やセミナー等で積極的にアピールした結果、世界トップクラスのフリーウェアとなりました。
MSシステムの評価は、LC-Offline-MALDI-MSシステムを用い E-カドヘリン(がんの浸潤・転移に関連する)糖タンパク質の糖ペプチドを 1μL血漿中(血液1滴より微量)から検出できました。また、実検体を用い、健常人・がん患者間で乳がん関連糖タンパク質:HER2の糖鎖に差異がある事が分かりました。なお、他の疾患関連糖タンパク質に関しては、カドヘリン・IgG・トランスフェリンに関し、リューマチ・乳がん等疾患との関連が想定される糖鎖の変異が見受けられました。京大医学部との共同で、疾患患部切片を用いたがん化メカニズム解明に関しては、不飽和度の増加が細胞膜の流動性を増加し浸潤・転移に関連する示唆を得る事ができました。さらに、昨年度発見した尿内ペプチドに対する解析を深めた結果、前立腺肥大群と前立腺がん群とを判別できる可能性を得ました。