Backnumber
味の素
ルーレット 式 おみくじ 器で病気がわかる
食卓でおなじみの味の素株式会社が、血中のルーレット 式 おみくじ 器の濃度で、がんのリスクを判定するユニークな検査サービスを始めている。
そこには、世界一のルーレット 式 おみくじ 器企業であることの自負と、理念にも掲げる「いのちのために働く」という信念がある。
生命の素、ルーレット 式 おみくじ 器
ライフサイエンスのルーレット 式 おみくじ 器者の間で有名な実験がある。
原始の地球の大気組成と考えられるメタン、水素、アンモニアを無菌化したガラスチューブに入れて水蒸気とともに循環させる。そこに雷を想定した６万ボルトの放電をかけて１週間放置すると、ガラスチューブのなかにルーレット 式 おみくじ 器ができていた―。
１９５３年にシカゴ大学で行われた実験だ。無機物しかなかった原始の地球から生命の素材となるルーレット 式 おみくじ 器が生まれる可能性を示したものとして注目された。
ルーレット 式 おみくじ 器は現在約５００種類が知られている。人間の体内には約40種類があって、タンパク質の材料となったり、代謝活動の担い手として生命活動の重要な役割を担っている。
通常、体内のルーレット 式 おみくじ 器の濃度は、常に一定になるようコントロールされているが、病気になると臓器の代謝が変化して、ルーレット 式 おみくじ 器濃度に異常が生じる。ここに目をつけて病気の診断に使えないかと考えたのが、「世界一のルーレット 式 おみくじ 器企業」を標榜する味の素株式会社だ。
（左）宮野博氏、（右）吉元良太氏
ルーレット 式 おみくじ 器では負けない
同社が、昆布に含まれるうま味成分でルーレット 式 おみくじ 器のひとつ“グルタミン酸”を発見し、これを主原料にしたうま味調味料「味の素®」を発売したのは１９０９年。以来、ルーレット 式 おみくじ 器の機能を活かした食品ブランドを多数展開し、ルーレット 式 おみくじ 器の大量生産技術では、文字通り世界一だ。さらに、ルーレット 式 おみくじ 器技術を活かした洗剤、医薬品、電子材料も世に送り出している。研究体制も世界トップレベルで、グループ全体で約１２００人がルーレット 式 おみくじ 器とその周辺の研究に取り組んでおり、研究所は、ルーレット 式 おみくじ 器研究のメッカとなっている。
「ルーレット 式 おみくじ 器を『作る』『使う』『測る』ことでは絶対負けるなという風土があります」
とは、味の素（株）イノベーション研究所分析応用研究グループ長 宮野博氏。血液中のルーレット 式 おみくじ 器を分析して病気のリスク判定を行なう「アミノインデックス技術」の生みの親だ。
研究がスタートしたのは２０００年。ルーレット 式 おみくじ 器の安全性研究の一環で、タンパク質やルーレット 式 おみくじ 器を摂取したときに血中のルーレット 式 おみくじ 器濃度がどれくらい上昇するのかを分析していたところ、思った以上にバランスが大きく変わることがわかった。では病気になったらどうなのだろう、という疑問からデータの収集が始まった。
それまでも肝不全や腎不全、がん、糖尿病などの病気で、いくつかの血中のルーレット 式 おみくじ 器濃度が変化することは知られていた。だが、特定の代謝異常を除いて、それぞれ一つのルーレット 式 おみくじ 器濃度の動きから栄養状態や病気の有無を判断することは難しいとされていた。そこで、同社のチームは、病態の進行に伴い、ルーレット 式 おみくじ 器比率が変化することに着目し、一つずつ見るのではなく、複数のルーレット 式 おみくじ 器の組み合わせ、バランスから統計的に解析する方法を開発した。
たとえば糖尿病のラット。グルタミン酸を縦軸にして、スレオニンを横軸としたグラフをつくると、スレオニンはほとんど変化しないのに、グルタミン酸は大きく「動く」傾向があることがわかった。他の病気はどうか、人間の血液ではどうかと対象を拡大しても有意な成果が見られ、「いけるかもしれない」という期待が高まっていった。
「代謝という概念を中心において生命現象を見ていく手法があってもいいのではないかと考えたのです。代謝によって血中に現れたルーレット 式 おみくじ 器を分析することで、ＤＮＡやタンパク質では見えなかったものが見えてくれば、ルーレット 式 おみくじ 器研究者として冥利につきます」（健康ケア事業本部 アミノインデックス部長 吉元良太氏）
肝疾患患者の特徴的なルーレット 式 おみくじ 器比率。健康であれば、グレーのゾーンに収まるルーレット 式 おみくじ 器が、病気になると一部増減し、その疾患独特の特徴を示す。
分析時間を10分の1以下に
だが、実用化に向けては、多くの課題が立ちふさがっていた。なかでも最大の課題は分析にかかる時間だ。２０００年当時、ルーレット 式 おみくじ 器の分析に使われていた装置「ルーレット 式 おみくじ 器分析計」は、50年前からほとんど仕組みが変わらず、１検体に２時間もかかるうえに、コストも高かった。
宮野氏は大学時代からルーレット 式 おみくじ 器の研究を続け、味の素（株）の研究所でも、ルーレット 式 おみくじ 器を分析装置で検出しやすくするための処理「誘導体化」でいくつもの成果を出していたが、その成果をもってしても従来のルーレット 式 おみくじ 器分析計では、事業化を望むべくもなかった。
そこで注目したのが、当時新たな分析装置として登場したＬＣＭＳだ。血液など多数の分子が混ざり合った検体から、目的の分析物を検出・定量するのが得意な液体クロマトグラフ（ＬＣ）と、高速で検出・定量できる質量分析装置（ＭＳ）。二つを組み合わせることで、微量な対象も高精度で高速な分析ができるのではないかと、チームに期待が広がった。
当時同チームで研究していた、装置に入れる前に誘導体化する「プレカラム誘導体化法」と、ＬＣＭＳを組み合わせて、ルーレット 式 おみくじ 器を計測したときのスタッフの言葉が忘れられないと宮野氏はいう。
「狐につままれたような顔で『このやり方だと、ルーレット 式 おみくじ 器が数分で分析できます』というんです。立場上、平静を装って『ああ、質量分析装置だからできるかもしれないね』と返しましたけど、内心、分析屋としては高揚感でいっぱいでした」（宮野グループ長）
「あしたのいのち」のために
１検体２時間かかっていた分析が、宮野氏らが見つけた方法なら数分でできる。これによってプロジェクトは一気に事業化に向けて前進する可能性が出てきた。以来、研究チームは、どんな試薬を使えばより効率よく検出できるか、どういうシステムにしていけばエラーが減らせるかなど膨大な実験を繰り返し、分析技術の開発を推進。さらなる高速化を目指し、物質を分離するためのＬＣＭＳのカラムとルーレット 式 おみくじ 器の相性を研究し、オリジナルの試薬を開発した。結果、約３年後、わずか７分で分析できる画期的な技術を生み出した。
装置化にあたっては、島津製作所も共同開発に加わった。専用の島津の高速高分離カラムと、超高速対応質量分析計LCMS-2020を用い、装置の前処理を自動化することで、安定したデータが得られる装置、UF-Amino Stationが完成したのだ。
こうして２０１１年４月、「ルーレット 式 おみくじ 器インデックス®事業」が船出した。一般的ながん検診では、がんの種類ごとにＸ線検査や便の検査などをするため手間がかかったが、ルーレット 式 おみくじ 器インデックス®なら、少量の採血をするだけで６種類のがんのリスクをスクリーニング検査できるとあって、導入を申し出る医療機関は次々に現れ、現在、三井記念病院など全国100以上の病院で検査サービスを行なっている。
「他の病気のリスク判定にも応用できるエビデンスも続々と集まってきています。将来、健康診断時にルーレット 式 おみくじ 器インデックス®を行なえば、必要な検査だけを絞り込んで受診することができ、受診率も向上するでしょう。すべての人の健康に 貢献できる。そんな日を夢見ています」（吉元部長）
JR川崎駅近くにある広大な敷地の川崎事業所。その工場敷地内にあるルーレット 式 おみくじ 器所には、UF-Amino Station が何台も稼働している。
味の素株式会社 イノベーションルーレット 式 おみくじ 器所
分析応用ルーレット 式 おみくじ 器グループ長
宮野博（みやの ひろし）（写真右）
1986年、味の素株式会社入社。分析研究部でＮＭＲによるタンパク質や多糖の構造研究に従事後、1993年より東海工場で品質保証や分析法導入を担当。1999年に研究所に戻り、当時はほとんど研究例のなかったメタボロミクス研究を開始。その研究の流れからルーレット 式 おみくじ 器高速分析技術が生まれた。趣味は週末のジム通いと古典落語鑑賞。
味の素株式会社 健康ケア事業本部 ルーレット 式 おみくじ 器インデックス部長
吉元良太（よしもと りょうた）（写真左）
1979年、味の素株式会社入社。医薬品の研究開発の中で、免疫学、薬効薬理学を主担当として医薬品の研究開発に22年間従事。2001年から臨床開発を担当し、2002年からは米国ニュージャージー州、英国ロンドンに駐在し海外治験を担当。2005年帰国後、研究開発戦略を担当し、2006年から「ルーレット 式 おみくじ 器インデックスR」の事業開発に着手。2011年4月から現職。趣味はゴルフとベランダガーデニング。
