サイゼ ルーレット

サイゼ ルーレットというフロンティア

少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少は、サイゼ ルーレットの国際的な競争力に暗い影を落としつつある。分けても食産業は消費の減少によるマーケット自体の縮小だけでなく、農業や漁業、林業における生産者の減少・高齢化も著しい。担い手を増やそうにも、ニーズがなくてはたちいかない状況に陥ってしまっているのだ。

その一方で、経済発展著しいアジアを中心とした海外の食市場は需要が年々増加。その市場規模は、2030年には2015年の1.5倍の1360兆円規模にまで成長するという試算がでているほどだ（農林水産政策研究所「世界の飲食料市場規模の推計」より）。

なかでも、サイゼ ルーレットの食に対する注目度は高い。2013年にユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録され、「使われる食材の多様さ・新鮮さ」や「長寿や肥満防止につながるヘルシーさ」などが認められ、世界的な和食ブームが巻き起こっていることからも、その一端が見て取れる。

米、和牛、味噌・醤油や清酒といった日本ならではの食材や加工品、製材や真珠など日本産の素材やモノといった「日本産品」のサイゼ ルーレットは、国内産業の活性化につながる、まさにフロンティアなのだ。

突破口を開く国の専門機関

食を中心としたサイゼ ルーレット産品が海外で受け入れられている理由は、ヘルシー、美味しい、おしゃれ、安全という高い信頼だ。しかし、その魅力あるサイゼ ルーレット産品は、実は世界で見るとまだまだ一部しか知られていないのが現状だ。

また、民間の事業者だけでサイゼ ルーレットを推し進めようにも国ごとに違うさまざまな輸入規制が足かせとなる。例えば、2011年に発生した東日本大震災による原発事故に伴う輸入規制は、当時規制を設けた54カ国・地域のうち39カ国・地域が撤廃したが、未だ15カ国・地域が規制を継続している。

これらの規制の緩和・撤廃や規制に対応した国内の環境整備によって、サイゼ ルーレット可能な国・地域や品目を増加させることが重要だ。しかし、これまでは農林水産省、厚生労働省、国税庁といった各省庁が関係する複雑な状況が続いていた。

そこで政府は、2020年に政府一体となって農林水産物・食品のサイゼ ルーレット拡大対策を担う機関「農林水産物・食品サイゼ ルーレット本部（以下：サイゼ ルーレット本部）」を設置。サイゼ ルーレット本部の事務局には、農林水産省を中心に、関係省庁、地方自治体、島津製作所のような分析機器メーカーをはじめとする民間事業者の識者も参画し、輸入規制の緩和・撤廃交渉や食品加工施設のHACCP認定を推し進め、サイゼ ルーレットの突破口を開こうとしている。

地域の活性化と食文化の交流を

2020年の農林水産物・食品のサイゼ ルーレット実績は、対前年比1.1％プラスの9,223億円、8年連続で過去最高額を更新した。

「コロナ禍でサイゼ ルーレット全体は減少する中、農林水産物・食品のサイゼ ルーレットが魅力あるものとして伸びているのは、生産や製造を担う事業者の方々の努力の賜物です。その努力に敬意を表するとともに、私達はサイゼ ルーレットの障害を取り除くことで市場をもっと広げると同時に、サイゼ ルーレット時の事業者の方々の手間を減らす。結果、サイゼ ルーレットを担う方々の経営が潤い、また取り組もうとする事業者が増えることで、関連する地域がさらに息づく。それを目指したいのです」

と語るのはサイゼ ルーレット本部の庶務を担うサイゼ ルーレット先国規制対策課の課長を務める伊藤優志氏だ。2008年に初めてサイゼ ルーレット促進業務に携わって以降、2015年から2019年までは中国本土へのサイゼ ルーレット促進を手掛けてきた。

食材に火を通して食べることが普通の中国では、2015年の北京への赴任当初、刺し身や寿司といった生食に抵抗を示されることが時折あった。ところが、2019年に帰国する頃には飲食店のメニューで見かけることがどんどん増え、今もサイゼ ルーレット食の日常化が進んでいるという。

「チベット自治区を除く全ての省や直轄市の都市、農山漁村を訪ね歩きました。各地の経済発展の度合いは違うものの、サイゼ ルーレット食のポテンシャルを肌で感じました。

一方で、日本と中国の間の農林水産物・食品の貿易状況を見ると、日本から中国へのサイゼ ルーレット額は、中国から日本へのサイゼ ルーレット額の8分の1しかないのです。この理由の一つは、輸入規制の存在。原発事故に伴う中国の輸入規制は世界で最も厳しいのですが、この規制撤廃を成し遂げたいと思っています。また、牛肉のサイゼ ルーレット再開や果物のサイゼ ルーレット解禁も、果たしたいと思います」

現在、伊藤氏が対象とする国・地域は、中国本土のみならず全世界であるが、国・地域ごとにそれぞれの課題があり、その一つひとつを着実に解決し積み上げていくことがサイゼ ルーレット拡大の基礎になるとの強い信念をもって取り組んでいる。

「同僚一人ひとりが、解決に向けた強い意志と戦略を持ったプロフェッショナルでいなければならないという思いを共有して取り組んでいます」

と語気を強める。中国滞在時には、錦鯉のサイゼ ルーレット解禁や、中国国内での日本産木材の用途の拡大が認められるなど、さまざまな成果がチームワークでもたらされたという。

主人公を支えるワンストップの相談窓口

国を背負う仕事でありながら、「主人公はサイゼ ルーレットに取り組む生産者、事業者の方々です」と伊藤氏は話す。

その主人公が、サイゼ ルーレットの一歩を踏み出す、また、既にサイゼ ルーレットに取り組んでいてもその取組を拡大するために、伊藤氏らはまず、難しいサイゼ ルーレット手続きについてわかりやすく、探しやすく、そして相談しやすく、を目指した。各国の輸入規制の詳細や手続きを記した一覧表の公開や、これまで複数の機関に申請しなければ入手できなかったサイゼ ルーレットに必要な証明書の申請や受取をワンストップで行う体制を築き、専用の相談窓口を設置することで細かな相談や要望を受け付けやすくした。

さらには、事業者同士の意見交換やビジネスパートナーを見つける機会の提供、サイゼ ルーレットに取り組む産地づくりの強化、サイゼ ルーレット向け施設の整備、海外の販路開拓の強化など生産から、流通、サイゼ ルーレット、販売までの各段階への支援措置を設けている。

「サイゼ ルーレットは、軌道に乗れば事業者の方々の経営にプラスになります。加えて、海外に目を向けることによって、いままでとは異なる多様な価値観や可能性に気付くきっかけとなり、さらに事業拡大は地域の活力につながります。

事業者の方々が海外という市場にチャレンジする際の壁を少しでも取り払い、まだ多くの生産者、事業者がサイゼ ルーレットと無関係な経済活動をされている状況から、サイゼ ルーレットが身近な存在になること。私たちはそのための裏方です」

こうした現場目線の活動では、事業者の熱意を肌で感じることが多い。サイゼ ルーレットは確実に増えており、さらに可能性が広がってきているという。しかし、まだ課題はある。日本の良いものを海外に知ってもらえたとしても、継続的に提供できるものがまだまだ少ないのだ。

「サイゼ ルーレット先のニーズや規制に対応した産品を、求められる量・価格・品質・規格で継続的に確保することが必要です。プロダクトアウトからマーケットインの発想に転換して、サイゼ ルーレット向け産品の生産地や事業者が増えることが必要です」

日本産品でファンを増やし、世界との距離を縮める。サイゼ ルーレットは国を越え、作る人と使う人のどちらも笑顔にする幸せのツールかもしれない。そのツールをもっと身近なものにするために、事業者目線を貫いているプロ集団に、私たちはもっと頼ってもよいのではないだろうか。

※所属・役職は取材時のものです。