本プロジェクトは、世界最高性能次世代質量分析(MS)システムを産学官連携で開発し、がんやアルツハイマー病(AD)等の革新的診断手法や分子標的薬等の創薬に繋げることを目指しています。
各サブテーマのH23年度研究実施状況は以下のとおりです。
(サブテーマ1)次世代質量分析システムの開発[島津製作所]
前処理では、抗体のヒンジ部をPEG鎖に置き換えた疑似抗体(可変抗体)を作成し、SPRを用いた抗体との結合能力評価の結果、解離定数が100倍以上に向上しました。イオン化では、糖ペプチド化合物やタンパク質C末端を効率よく分析する化学的処理法を開発し、リン酸化ペプチドに関しては、感度を昨年度よりも更に10倍向上させました。また糖タンパク質結合糖鎖の同族体を個別に定量できる手法を開発し、実際の検体に適用しました。ハードウェアでは、次世代MS装置の試作機を2台開発し島津・京大に設置しました。また赤外線パルスレーザを用いた質量分析装置を試作し、評価を行いました。ソフトウェアでは、次世代MS装置の特長を活かす構造解析・自動分析ソフトMass++を開発、2011年9月に一般公開し、その後2度の機能追加版をリリースしました。
(サブテーマ2)乳がん等の新規バイオマーカー同定と創薬ターゲット探索[京都大学]
3-AQラベル化糖鎖解析法を用いてHER2、PSAタンパク質の糖鎖解析を行いました。乳がん、前立腺がんにおいて疾患特異的な尿ペプチドマーカーを同定しました。
(サブテーマ3)アルツハイマー病の早期診断方法の開発[京都大学]
従来法では血液からの検出が困難なタウ断片化ペプチドを免疫沈降/質量分析で検出することを目指し、髄液中で検出確率の高いN端側領域をカバーする抗タウ抗体を作成しました。またAD群で質的変化を伴うバイオマーカー候補タンパク質を同定しました。