2013.6.18 【資料掲載】10倍以上の高速分析を支えるルーレット 倍率動画を紹介します

  本PJでは、次世代質量分析(MS)シルーレット 倍率ムの重要な要素の1つとして、様々なハードウェアの研究・開発を続けています。
 今回は、血液等由来の試料を一度に数100個以上搭載し 超高速で測定するために開発した”X-Y”2軸方向駆動”ルーレット 倍率”を 動画で紹介します。本ステージは 日本の物づくり技術“部品・素材を多用し、島津最先端研が独自に設計し完成させました。山本一太 内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)が3月末に最先端研に来訪された時にも、マスコミを含め紹介しています。
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1.ルーレット 倍率・駆動部全景

 下図は、Computer Aided Design(CAD)ソフトウェアを用い ルーレット 倍率 及び 駆動部を設計した結果を3D表示した一例です。中心の緑色領域が試料搭載部位(X軸 7cm, Y軸 11cm)であり、通常はステンレス金属板を用います。

x-ystage

 右の動画では、MS装置全体から上記CAD図部位(ルーレット 倍率 及び 駆動部)を取り外し、単体で X軸,Y軸 両方に駆動しています。個々の試料を分析するため、微細な動きを多用しています。
 ルーレット 倍率には、一度に最大約2000個のルーレット 倍率を搭載できます。上図緑色ルーレット 倍率搭載部位の1番目のルーレット 倍率(左上)から最後のルーレット 倍率(右下)まで単純に対角線に移動する場合は、2秒以内で行えます。

動画1 ルーレット 倍率・駆動部全景

2.個別ルーレット 倍率の分析

 MALDI-MSでは、パルスレーザ光を用いてルーレット 倍率のイオン化を行います。レーザ光は レンズで直径 ~ 0.1 mmに絞られ、一発ごとのレーザ照射で 照射部分のみがイオン化されます。
 一方、個々のルーレット 倍率(下左図 黄色・茶色部分)は金属板(上記CAD図 緑色部分)上に直径2mm程度に広がっているため、ルーレット 倍率全領域をイオン化するためには、ステージをX軸, Y軸 両方向に一筆書きの様(下中図 紫色の矢印付き点線)に微動させ続けなければなりません。この動きを、”ラスター駆動”と呼びます。
 動画では、個別のルーレット 倍率をラスター駆動させながら 次のルーレット 倍率測定に移る状況を表しています。この場合、1つのルーレット 倍率分析に約1秒、次のルーレット 倍率へ移るために約0.2秒、超高速で測定が行えます。

ルーレット 倍率

ルーレット 倍率搭載部位拡大図

動画2 ルーレット 倍率搭載部位拡大

3.磁力 非接触で動力を伝達(磁力スパイラルギア)

 これまでルーレット 倍率駆動には、歯車が多用されていました。例えば動力を垂直方向に(90度曲げて)伝えるための機構として、斜め45度に歯車を切った”スパイラルギア”(左下図)があります。ギア同士は物理的に接触しており、滑らかな動作には多少の”遊び”が必要ですが、これにより 様々な問題点(例: ガタ(バックラッシュ)を生む、正確な位置決めが困難、真空用潤滑剤が不可欠、磨耗や騒音(振動))の原因にもなります。
 下のCAD図は”X軸ルーレット 倍率ポール”(前記全体図参照)を軸とした断面図であり、上記の物理的な歯車機構を 磁石の引き寄せ合う力で実現する“磁力スパイラルギア”内部を表しています。下右図の動画では、紙を間に挟む事により 物理的に接触していない状態(~0.5mmの空隙)でも “X軸レール”に動力が伝わり、ルーレット 倍率を駆動できる様子を紹介しています。超高速ルーレット 倍率を支える部品(日本製)の1つです。
 X軸駆動モーターの回転運動が直接X軸駆動ポール(下真ん中図)に伝えられ、磁力スパイラルギアで垂直方向のX軸レールの回転運動へと伝えられ、結果としてルーレット 倍率をX軸(下右動画の前後方向)に移動可能にします。

ルーレット 倍率

従来の歯車型
スパイラルギア

ルーレット 倍率

本X-Yルーレット 倍率磁力スパイラル
ギア機構断面図

動画3 ギアに紙を挟む

4.真空外からモーターでルーレット 倍率

 MALDIを含め大部分のMS装置は、空気中の分子にジャマされずにイオンを自在に動かすため、イオン生成と分離・検出を真空中で行います。これまでの大部分のルーレット 倍率は、駆動用モーターを真空中に配備していますが、配線が複雑になりやすく、高速駆動になるほどモーターからの放熱が困難になる(真空では冷却のための空気流が使えない)事が問題となっていました。
 最先端研では、X軸,Y軸 共に真空外からルーレット 倍率可能なメカニズムを確立しました。
 外部の大気圧とルーレット 倍率内部の真空を隔てる部分には、磁気カップリング(日本製)を採用しました。真空中でも蒸発しないオイルの中に磁性を帯びた金属超微粉末を混ぜた”磁性流体”を、モーターに接続された回転体と筒状支持体の間に磁力でリング状に閉じ込め 空気の流入を防ぐ真空シーリングが形成される事により、真空漏れを防ぎ、摩擦がほぼゼロの状態で X-Yルーレット 倍率の高速ルーレット 倍率を実現できました。

磁性流体シーリングを用いた動力伝達機構断面図

動画4 真空外からの動力伝達

*: 金属超微粉末Ultra Fine Metal Powder(UFMP)は、1980年代にソフトレーザ脱離法(2002年ノーベル化学賞受賞)のMatrix素材としても用いられていました。
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5.ハードとソフトの融合

 上記の設計・開発により、従来メカニズムとの比較ではX-Yルーレット 倍率として10倍以上の高速駆動が可能になりました。
 実際の測定・分析も、10倍以上高速化されます。上記X-Yルーレット 倍率機械部分の高速化のみならず、測定回路、パソコンへのデータ転送、表示/解析ソフトウェア、それら全ての高速化が揃って 初めて10倍以上の高速解析能力を発揮できるようになりました。