2. ヨーロピアン ルーレット能、効率

ユーザーインタビュー ラミナー型レプリカロト 6 ルーレット

目次

2-1. ヨーロピアン ルーレット能

2つの近接した波長λとλ+Δλの2 本のスペクトル線があるとき、どのくらい小さいΔλまでを2本のスペクトルとして区別できるか、という能力を表わすものが分解能です。一般に、ヨーロピアン ルーレット格子(Gratings:グレーティング)のヨーロピアン ルーレット光はヨーロピアン ルーレット限界で定義される有限の幅をもっています。レーリーの基準Rayleigh criterion)によれば、図2のように波長λのスペクトルの第1 極小値の位置に波長λ+Δλのスペクトルの最大値がくるときを分解できる限界と定義しています。このときの分解能λ/Δλは、ヨーロピアン ルーレット格子の幅をW とすると、

ヨーロピアン ルーレット(6)

で表わされます。ここでN ×W はヨーロピアン ルーレット格子の溝の総本数を意味します。
しかし実際にヨーロピアン ルーレット格子を他の光学素子と併用する場合、たとえば分光器に組み込んで使用する場合などは、他の光学素子(レンズやミラー等)の収差や不完全さ、あるいは光源やスリットの大きさのため、スペクトル線はさらに広がります。このため、分解できるスペクトルの波長差Δλは大きくなるので、一般に光学系の分解能は(6)式で表わされるヨーロピアン ルーレット格子単体の分解能より悪くなります。

図2 ヨーロピアン ルーレット格子の分解能

図2ヨーロピアン ルーレット格子の分解能

2-2. 高次ヨーロピアン ルーレット光の影響と防ぎ方

(2)式のグレーティング方程式からもわかるように、波長λの光がヨーロピアン ルーレット格子に入射すると、m の値によっていろいろな角度にヨーロピアン ルーレットします。ここでm は整数のためヨーロピアン ルーレット角β は飛び飛びの値をとります。このため、図3 のように広い波長範囲の光がヨーロピアン ルーレット格子に入射すると、隣り合う次数のスペクトルが一部重なり合う現象が起こります。
ここで重ならない領域をヨーロピアン ルーレット格子の自由スペクトル領域free spectral range)と呼びます。m次光で波長λ1からλ2までの光を使用する場合、以下の条件を満足すればスペクトルの重なりを防ぐことができます。

ヨーロピアン ルーレット(7)

たとえば、+1次光で350nmから長波長域側を使用する場合は、700nmまでがスペクトルが重なりあうことなく分光できます。このとき、350nmから700nmの波長域が自由スペクトル領域となります。また、+2次光を使用する場合は、350nmから525nmが自由スペクトル領域となります。ただし、グレーティング方程式の項でも触れたように、長波長側の波長λ2、ここでは700nmの光がヨーロピアン ルーレット光として得られる溝本数を選ぶ必要があります。
使用する波長域が自由スペクトル領域を越える場合は、重なる領域において使用する次数以外のスペクトルを除去する必要があります。たとえば、+1次光で350nmから800nmまでの領域を使用する場合、700nm以上の領域では、重なり合う350nmから400nmの2 次光を除去する、つまり400nm以下をカットするフィルタを使用します。あるいは、検出器の切り替えによって防ぐ方法もあります。

図3 ヨーロピアン ルーレット格子の自由スペクトル領域

図3 ヨーロピアン ルーレット格子の自由スペクトル領域

2-3. ヨーロピアン ルーレット効率とは?

ヨーロピアン ルーレット効率

ヨーロピアン ルーレット効率は、入射光のエネルギーのうち、ヨーロピアン ルーレット光としてどの程度のエネルギーを取り出せるかを示す値です。
一般にヨーロピアン ルーレット効率の表わし方は、絶対ヨーロピアン ルーレット効率と相対ヨーロピアン ルーレット効率の2 通りあります。絶対ヨーロピアン ルーレット効率とは、入射光強度に対するある次数のヨーロピアン ルーレット光強度比であり、相対ヨーロピアン ルーレット効率とは、絶対ヨーロピアン ルーレット効率をコーティング材質の反射率で割った値です。当社では、ヨーロピアン ルーレット効率として相対ヨーロピアン ルーレット効率を採用しています。カタログの相対ヨーロピアン ルーレット効率として平面ヨーロピアン ルーレット格子は λB(Litt)、凹面ヨーロピアン ルーレット格子はλBの値を記載しています。

偏光別ヨーロピアン ルーレット効率

ヨーロピアン ルーレット格子は一方向に溝が刻まれた構造をしているために、入射光の偏光状態によりヨーロピアン ルーレット効率に顕著な違いが現れることがあります。
ヨーロピアン ルーレット格子の溝方向と電場ベクトルの振動方向が垂直であるS偏光(TM波)では、ヨーロピアン ルーレット効率の大きな変動がみられます。また、波長の長い領域で非常に高いヨーロピアン ルーレット効率を示すことがあります。
ヨーロピアン ルーレット格子の溝方向と電場ベクトルの振動方向が平行であるP偏光(TE波)では、S偏光ほどの大きな変動は無く、ブレーズ波長をピークとするなめらかなヨーロピアン ルーレット効率曲線となります。
図4 にリトロー配置での、偏光別ヨーロピアン ルーレット効率の計算結果を示します。横軸は波長λとヨーロピアン ルーレット格子周期d の比、λ/d としてあります。
ブレーズ角(正弦波格子では溝深さ)が大きくなるとスカラー理論が成り立たなくなり、ヨーロピアン ルーレット効率は偏光別に大きく異なった値となります。

図4 偏光別ヨーロピアン ルーレット効率

図4偏光別ヨーロピアン ルーレット効率

2-4. ヨーロピアン ルーレット異常(アノマリー)とは?

ヨーロピアン ルーレット格子(Gratings:グレーティング)を用いてスペクトルを観測する場合、スペクトル強度が急激に変化することがあります。これはアノマリー(ヨーロピアン ルーレット異常)と呼ばれます。この現象はS 偏光で顕著に表れます。
アノマリーは波長λでヨーロピアン ルーレット次数m' の光が、ヨーロピアン ルーレット角β=±90 °になった場合(Passing-off の条件)に起こり、これはWoodのアノマリーと呼ばれています。

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